文法の導入がうまくいかない原因は、ほとんどの場合、説明のわかりにくさではありません。生徒にとってその文法が要らないことです。三単現のsは、三人称について語りたい場面がなければただの罰ゲームですし、比較級は、比べたいものがなければ変化表の暗記です。
導入の仕事は1つだけ——その文法が必要になる場面を教室に作ること。この記事では、当サイトの導入授業案20本を「どんな場面を作るネタか」という視点で学年別に紹介します。すべて板書例・展開・活動つきの授業案PDFです。
中1の導入ネタ(7本)
| 文法 | ネタ | 作る場面 |
|---|---|---|
| be動詞 | 教室を動いて覚えるTPR | 指示を聞いて動くうちに、状態と場所を表す文が体に入る |
| 一般動詞 | ジェスチャーで先生の一日 | 動作を当てるうちに動詞が「動きの言葉」として入る |
| 三単現 | この人だれ?ヒミツの紹介クイズ | 三人称について語る必然=人物あてクイズ |
| 命令文 | Teacher Says!ひっかけ指示ゲーム | 指示が通じる・聞き分ける快感から入る |
| can(助動詞) | ヒント3つでだれでしょう?Guessing Game | can(できること)がヒントになる人物あて |
| 進行形 | 教室スポーツ実況中継 | 実況=「今まさに」しか使えない場面 |
| 過去形 | 先生の昨日、どれがウソ? | ウソ日記を見破るために過去の文を読む・聞く |
中2の導入ネタ(7本)
| 文法 | ネタ | 作る場面 |
|---|---|---|
| 未来表現 | 週末の予定インタビュー | 決めてある予定を聞き合う=be going toの必然 |
| 助動詞 | 転校生は宇宙人!地球ルール講座 | 地球の常識を教える=must / have to の場面 |
| 接続詞 | もしも占いの館 | 占い=if(もし〜なら)が主役になる場面 |
| 不定詞 | 先生の人生やりたいことリスト | want to(したい)を教師の自己開示から |
| 動名詞 | 動詞を缶詰にする趣味紹介 | 趣味を語る=enjoy 〜ingの必然 |
| 比較 | どっちが○○?実測クイズ | 予想→計測で「数字で決着」を付けたくなる |
| 受け身 | チャンツ×ご当地クイズ | Where was it made? で産地を当てる |
中3の導入ネタ(6本)
| 文法 | ネタ | 作る場面 |
|---|---|---|
| 現在完了・経験 | Have you ever 絶景クイズ | 行ったことある?の聞き合いが止まらなくなる |
| 現在完了・継続 | 先生の愛用品、何年もの? | 愛用品の年数当て=for / since の必然 |
| 分詞 | 名探偵!〜している人はだれ? | 人物を説明で特定する=後置修飾の必然 |
| 関係代名詞 | スリーヒントクイズ | 名前を言わずに説明する=関係代名詞の本領 |
| 間接疑問 | クイズショー Do you know what this is? | 「知ってる?」の聞き方が主役の場面 |
| 仮定法 | もしも別の世界に住めたら | ありえない想像だから本音が出る |
導入ネタに共通する4つの型
20本を作ってみると、うまくいく導入は4つの型に集約されます。自分でネタを作るときのテンプレートとしてどうぞ。
- クイズ・あてっこ型(三単現・can・関係代名詞・現在完了)——答えを知りたい気持ちが、英文を聞く・読む理由になる。ヒントの英文に新文法を仕込む
- 教師の自己開示型(過去形のウソ日記・不定詞のやりたいことリスト・愛用品)——先生の意外な一面は最強のコンテンツ。生徒は文法ではなく先生の話を聞きに来る
- 体を動かす型(TPR・ジェスチャー・Teacher Says・実況中継)——意味を体で理解してから形に出会う。特に中1で有効
- 設定ごっこ型(宇宙人ルール講座・占いの館・もしも世界)——非日常の設定が「その文法しか使えない状況」を作る
どの型でも、導入の最後は必ず「生徒が自分のことを言ってみる」1往復で締めてください。聞いて楽しかっただけの導入は、次の時間に残りません。
導入のあとの流れ
導入で場面に出会ったら、定着→応用へ進みます。各文法の教え方ガイドに、この記事の導入案とセットで使う定着ドリル(まちがい診療所つき)・コミュニケーション活動・応用タスクを一本道で並べてあります。自分の教科書のどの単元でどの文法を扱うかは単元マップで確認できます。
よくある質問
導入に1時間使う余裕がありません。
紹介した授業案は、どれも核になる活動だけ抜き出せば15〜20分に圧縮できます(授業案に短縮版の目安を記載)。導入をゼロにして説明から入るより、15分の場面体験を挟む方が、結局は定着の時間を節約します。
盛り上がったのに、次の時間には忘れています。
導入は「意味と場面の記憶」を作る時間で、形の定着は別の仕事です。導入の翌時間に定着ドリルで形を固め、コミュニケーション活動で使わせる——この3点セットで初めて残ります。忘れるのは導入の失敗ではなく、続きが無いことが原因です。
ALTと一緒にやるならどのネタが向いていますか?
クイズ型と自己開示型はALTと相性抜群です。ALTの経験(Have you ever)、ALTの一日(三単現)、ALTと先生のどっちが〜?(比較)——ネイティブの本物の情報は、それだけで場面になります。