本文の授業を「教科書を開く→読む→訳す」で始めると、生徒は意味のわからない英文にいきなり放り込まれます。熟練の先生ほど、本文に入る前に 教師自身の語り(オーラル・イントロダクション)で、内容と新出表現に先に出会わせています。この記事は、その技術を誰でも再現できる5ステップの設計手順に落としたものです。特定の教科書・単元に依存しない方法論なので、どの本文にも使えます。
この方法で解決できる悩み
- 本文の授業が毎回「訳して終わり」で、理解が浅いまま進む
- 新出単語の意味調べに時間を取られ、内容に入る前に疲れる
- 生徒が本文を「自分に関係ない他人の話」として読んでいる
オーラル・イントロダクションとは
本文を読ませる前に、その本文の内容の要点を、教師が英語(+ジェスチャー・絵・実物)で語り聞かせる導入活動です。ねらいは3つ——①内容の見通しを与える ②新出表現を文脈の中で先に聞かせる ③「その先を読みたい」という期待を作る。訳を配るのでも、単語を先に教えるのでもなく、意味のある英語のシャワーを浴びせてから本文に入るのがポイントです。
5ステップの作り方
ステップ1: 本文の「核」を1文で言う
まず本文を教師が読み、「このパートで一番伝えたいことは何か」を日本語1文で書き出します(例:「留学生のティナが日本の給食制度に驚く話」)。この核が、語りの背骨になります。枝葉を全部語ろうとすると失敗します。
ステップ2: 新出表現を「語りに埋め込む」形で3つ選ぶ
本文の新出表現から、内容理解に必要な2〜3個だけ選びます。それを単語カードで教えるのではなく、語りの中で自然に何度も使う設計にします(新出語 surprised なら "Tina was surprised. Very surprised!" と表情つきで繰り返す)。
ステップ3: 「見せるもの」を用意する
語りだけでは伝わりません。絵・写真・実物・板書のキーワードのうち、用意できるものを2〜3点。給食の話なら給食の写真、驚きなら教師の大げさな表情。視覚情報が意味理解の補助輪になります。
ステップ4: 語りを組み立てる(既知語8割・未知語2割)
語りは、生徒がすでに知っている語を8割にして組み立てます。全部やさしくすると新出表現が入らず、難しすぎると聞くのをやめます。「知っている英語の海に、新出表現が島のように浮かぶ」バランスが目標。1回の語りは1〜2分で十分です。
ステップ5: 理解確認の問いを2つ仕込む
語りの後に、内容をつかめたか確認する簡単な問いを2つ用意します(Yes/Noや二択でOK)。"Was Tina happy or surprised?" のように。ここで生徒が答えられれば、本文を読む土台ができた合図です。答えられなければ、語りをもう一度。
実際の授業での流れ(10分)
- 教師の語り①(1分半)——見せるものを使いながら
- 理解確認の二択2問(1分)
- 教師の語り②(1分半・少しだけ情報を増やす)
- 「では、実際に本文ではどう書いてあるか読んでみよう」と本文へ(ここで初めて教科書を開く)
本文に入る頃には、生徒は内容の見通しと新出表現の音を持っています。同じ本文でも、読みの深さがまるで変わります。
本文の授業シリーズ
オーラル・イントロダクションで内容に出会わせたあとは、内容理解の発問(事実→推論→自分事の3層)、音読、リテリングへと進みます。それぞれの設計手順は、この「教科書本文の活用術」シリーズの別記事で解説しています。汎用の「本文パート攻略シート」(音読タイム→口頭再生→筆写)と組み合わせると、本文1パートの授業が型として安定します。